私たちは、何かしらの理由で人を好きになったり嫌いになったりします。
例えば、あの人はとても賢くて話が面白いから好きだ、あの有名人はマスコミで毒舌をふるってばかりだから嫌いだ。また、誕生日が同じだから、出身地が同じだから、趣味が似ているから、などという理由で周りの人や有名人に好意を持つようになることもあります。
果たして、どのような人に私たちは好意を感じるのでしょうか?少し言い換えるならば、私たちはどういう人と友人となりたいと望んだり、恋人として付き合いたいと感じたり、ファンとして応援したりするようになるのでしょうか。
対人魅力を構成する三つの要因
人に対して感じる好意を対人魅力と言います。
これまでの研究により、社会心理学では、対人魅力は主に類似性、外見、近接性の三つの要因に左右されるといわれています。
類似性
一つ目は、相手と似ていると魅力を感じるようになるという、類似性の効果です。考え方が似ている人と一緒にいたいと思ったり、出身地や誕生日や趣味が同じ有名人を支持するようになったりするといった現象は、類似性と対人魅力に関係という観点から捉えることができます。
考え方や趣味が似ている相手と一緒にいることは、利益をもたらします。なぜなら、相手と考え方が似ているならば、意見が対立して仲が悪くなってしまうという可能性も低くなり、友好的な関係を続けられるからです。
外見
二つ目の要因は外見です。簡単に言うと、外見が素敵な人には対人魅力を高く感じるということです。当たり前に思えるかもしれませんが、効果は絶大です。この効果を証明した実験をご紹介します。
心理学者のウォルスターらは、大学の新入生を対象にダンスパーティーを開催しました。つまり、ダンスパーティーを実験室にしてしまったのです。はじめに参加者の外見レベルが、ウォルスターらによって受付時にひそかに評価されました。また、性格や趣味などについてもアンケートに答えてもらいました。
パーティーでは男女でペアを組んでダンスをし、その後そのパートナーに対する魅力を尋ねました。
結果、知性や優しさ、面白さといった性格はパートナーに対する好意とはほとんど関係がありませんでした。はっきりとした効果を持っていたのは外見だけでした。つまり、事前に測定された外見のレベルが高いと、参加者はその人と親しくなりたいと感じていたのです。
また、外見が良い人はダンスのパートナーとしてだけでなく、様々な側面においても有利に扱われます。このように、外見の良い人が見た目以外にも様々な良い性質を持っていると判断される効果は、ハロー効果と呼ばれています。
外見が良い人ほど、より賢く誠実で社交的、温かい人だと判断されるのです。その結果、就職試験や昇進などといった、本来は外見とは関係ない側面において優遇されるといったことが起こります。
近接性
三つ目の要因は近接性です。
これは、距離が近い相手に対しては対人魅力が高く感じるということです。
大学の学生アパートにおいて、友人関係をテーマに調査を行ったところ、一番友人になりやすいのは、隣の部屋の学生だったという結果がでています。このような現象は普段の生活においてもよくみられます。例えば、学生が教室内で誰と仲が良いかというと、出席番号や席が近い人ではないでしょうか。
近接性が好意を生む原因として、一つには、出会う機会が増える事により、より相手を知る機会が増えるためであると考えられます。そして、これから出会う機会が増える、と思えば自然と相手に関心が向くのです。
また、人間にはよく知っているものに好意を抱く、という性質があります。知らない物や人には、常に何かリスクがあると考え、慣れ親しんだものを選びます。旅先で知らないレストランに入るよりも、どこにでもあるファーストフード店に入るほうが安心する、という経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
まとめ
もちろん、これだけではなく、様々な理由によって私たちは対人魅力を感じていますが、これら三つの要因は特に強力です。三つの要因をうまく使って、「人に好まれる」ことによってセールスの成績を伸ばすテクニックも知られています。
相手のことを知り、自分との共通点を見つけてそれを強調すること(類似性)、身だしなみを整え、きちんとした服装をすること(外見)、そして頻繁に直接訪れることによって親近感を抱かせること(近接性)です。これらのテクニックはセールスだけでなく、人と接する職場においても、常に役立ってくれることでしょう。